医学部入試に数学がある理由
私は、往診で東灘区の山の上にある施設に往診に行っています。坂道が複雑で道を覚えられず、その時だけタクシーを利用しています。長年懇意して頂いていた運転手さんがいて、穏やかな語り口で、どこかプロ野球の元DeNA監督の三浦監督に似た雰囲気のある方です。
喫煙と高血圧があり、2~3年に一度、胃カメラや大腸内視鏡を受けに来てくださっていました。鎮静剤を使う検査中も血圧は高めで、「高血圧の治療だけはしておいてくださいね」と声をかけていたのを覚えています。今日、隙間時間を利用して関学に行った際にタクシーでいきました。運転手さんは、私のクリニックの患者さんでした。その方がこう教えて下さいました。「先生、例の運転手さん、脳梗塞で入院されたそうですよ」驚きとともに、私は自分がいつも臨床で考えていることを思い返しました。
高血圧と喫煙は、脳梗塞の”2大危険因子”です。こうした危険因子は足し算ではなく”掛け算”のように働き、二つ揃うとリスクは一気に跳ね上がります。だから私は、生活習慣のすべてに踏み込めなくても、せめて血圧だけは必ず整えて頂きたいと考えています。
食道がんでも”喫煙X飲酒”という二つの危険因子があります。どちらも医者が簡単に変えられるものではないので、私は予防より早期発見に舵を切り、胃カメラでのチェックを勧めることが多いです。
医学では、このように危険因子をどう組み合わせるかが重要になります。これは入試数学でおなじみの「場合の数と確率」の発想そのものです。
これから受験シーズンを迎えます。医学部を目指す皆様には、ぜひ”確率”と”場合の数”を得意にしてほしいと思います。特に単科大学の医学部でしたら、”ヤマ張った方がいいかな”ぐらいに思います。






